繋がる伝統建築工匠

Term of professionals

社寺建築は伝統技術の集合体

施主様のご要望を具現化するために
1861年の創業以来受け継がれてきた
専門知識と職人の技術を結集させ
拝礼の対象となるにふさわしい
美しく荘厳な社寺を築きます

伝統技術の継承・保全・文化財の創造
これが我々の使命です

創 (設計)
材 (木材)
建 (宮大工・建具・左官・家曳)
葺 (瓦葺・銅板葺)
飾 (神具仏具・彫刻・畳・絵師)
創 ‒‒‒‒‒ 設計

設計-心に寄り添い空間を創造する

社寺建築の設計では長い歴史の中で培われた木割りをふまえ、施主様の想いを具現化していきます。 そこから建物全体の雰囲気や景観とのバランスを考慮して設計します。

特に留意するのは部材同士が接する部分や構造、機能を理解した上で問題なく納まるよう図面を引くという点です。

図面を見た施主様が完成を想像でき、大工をはじめとした職人が納得できる納まりを描くことが重要です。

建築様式や意匠に至るまで整合性のとれた設計をするには積み重ねた経験と知識が求められます。




社寺建築ひと筋だからこそ描ける整合性のとれた図面を基に材料を厳選し、各分野の匠の技が結集し違和感のない凛とした佇まいを築きます。

設計に留まらず文化財登録のサポートや歴史的価値の高い建造物の建築様式を後世へと受け継いでいくことも私たちの使命です。

人々の心を一つにし、その土地の記憶に想いを馳せながら伝統を重んじることは未来へと繋がる社寺建築の礎となると考えております。

材 ‒‒‒‒‒ 木材 

木材-姿を変えて生き続ける


世界最古の木造建築である法隆寺にもみられるように木は劣化のスピードが驚くほど遅く、時間の経過とともに色味が変わり光沢は増し、より価値のある素材へと変化していきます。

社寺建築で使用される木材は十分な強度をもち、厳選された良質な木材でなければなりません。

良質な木材を製材するためには強度や材種が持つ色や見栄えを加味しつつ、木を熟知した職人によって寸法や使用用途を考慮し、最も適した原木を選定することから始まります。

さらに社寺建築で使われる木材の多くは樹齢60年以上*であるため、貴重な一本の丸太が無駄なく材料となるようにどの位置から木取りすれば最良かを熟練の技術により見極めます。

そして、木材の膨張や収縮を最小限に抑え、高い品質が保たれるよう徹底した管理体制が整っていることも重要です。

こうして厳選され製材加工された木材に職人の手が加わることで何百年と風雪に耐え、愛される荘厳な建造物の要として木が生き続けます。

*一般的な住宅で使用される4寸角材で樹齢40年程度

建 ‒‒‒‒‒宮大工・建具・左官・家曳

宮大工-技と智慧の結集

宮大工とは神社仏閣の建築を専門とした大工であり、国宝や文化財をはじめ神社・寺院に関わる建造物の建築に携わる職人です。

社寺建築の魅力は扱う木材の圧倒的な大きさ、継手や仕口と呼ばれる材料同士を強固に繋ぎ合わせる伝統的な建築手法などが広く知られています。

他にも屋根の反りを美しく巧みに作り上げる宮大工の優れた技術などが挙げられます。

例えば屋根の線を美しく出すためには瓦や銅板を葺いた状態を想像した上で宮大工が納める下地の原寸を描きます。

更に荷重が適切に分散され、各部材が持つ役割を最大限発揮できるように継手に工夫を凝らし仕口を作ったり桔木を調整したりします。 究極の曲線美を生み出す技術は受け継がれてきた宮大工の智慧の結集です。

宮大工として何十年も経験を積んだ棟梁でも謙虚な姿勢で探求心と向上心を持って向き合い続ける、そうした情熱が技術の継承へと繋がり、ひいては次世代の文化財を造り上げる力になると信じております。

建具-繊細な手先が光と影を生む

木建具とは出入り口である扉や窓、間仕切り等に取り付ける戸・襖・障子・欄間などの木工部分の総称です。

社寺建築においては戸や襖以外にも山門の壁に菱格子を組み込む等その役割は多岐に渡ります。

建具職人には素材となる木の特性を知り使う場所や用途によって最良の木を選び、活かす知恵と技術が必要不可欠です。

特に木の強みである曲げや組子などの細工により繊細にデザインされた建具は空間を美しく埋めます。 同時に光と影による幻想的な風景を生み出し、その赴きある存在感は見る人を魅了します。

施主様のご意向と建物全体の調和を図りながら創意工夫することで建物に一層の深みが生まれます。

手掛けた建具の凛とした佇まいにご満足いただけた瞬間、この上ない喜びを感じます。

左官-歴史を紐解き鏝で重ねる

左官とは建物の土間や天井、壁などに鏝を用いて塗材を塗る職人です。

その仕事の代表的なものとして挙げられる漆喰壁は熟達した左官の技術があってこそ均一に仕上がり、優雅な光沢を生み出します。

左官職人は均一に塗るだけではなく、鏝を駆使し多彩な表現をすることが出来ます。そのデザイン性は芸術性が高く味わい深い仕上がりとなるのが特徴です。

一般的に左官の塗りの技術に注目されがちですが塗材を作る作業もまた大変重要です。

文化財や歴史ある建物は時代と地域により使われている材料が多様であるため、改修の際は壁を剥いで素材を見極めることから始まります。

そこから極力当時に近い素材を選び、かつ強度等の機能性を高めた塗材を作ることを目指します。 季節やその地域性を考慮した配合にしなければならないため職人の豊富な知識と経験を要します。

こうした工程を経て完成した建物を見た施主様から感嘆の声と笑顔をいただいた瞬間は職人冥利に尽きます。

また、業種の枠を越えた職人から仕事を認められることも大きな喜びです。

現代では左官の仕事自体を目にする場が極端に減少しておりますが、そうした中でも鏝を握り技術を磨き続け左官の技術を守り伝えるために精進しております。

曳家-変わらぬ景色を受け継ぐ

曳家とは構造等に留意しながら建物そのものを傷つけずに移動する建築工法であり、多くの場合は曳家後に沈下修正工事などを経て再び元あった場所に建物を戻します。

地盤の沈下は建物に歪みを生み、立て付けが悪くなったりヒビが入ったりと様々な悪影響を及ぼし大変危険です。

幾世代も風雪に耐え、歴史の重みを増す神社・仏閣の美しさや佇まいはそのままに、沈下修正することで地盤を水平に直して建物の歪みの原因を改善します。

歪みのない状態に戻ったことで再び建築当時の人々と同じ目線で景色を共有でき、その建物にある「歴史」や「人の想い」が繋がっていくと感じています。

積み重ねてきた歴史と想いを真摯に受け止めながら建物の保全に全力を注いでいます。 後世に受け継がれていくことは大きな喜びであり私たちの使命でもあります。

葺 ‒‒‒‒‒ 瓦葺・銅板葺

瓦葺-幾重の瓦に意匠を乗せて

屋根は多様な曲線を積み重ねた集合体です。幾枚の瓦を繋げて流線型・直線型の「線」を創り出します。

その美しく繋がった様は建物の威厳と静寂を醸し出す重要な構成要素です。

施主様や設計士、宮大工が築いてきた建物を最終的に引き継いで仕上げる葺師は、それまでの工程に込められた意匠を汲んで瓦を葺いていきます。

瓦は下地作りで6~7割が決まると言われております。

下地作りに至るまでに図面を引き、緻密な計算を積み重ねて仕上がりの輪郭をイメージします。 そして緩やかなカーブを描く屋根にピタリと瓦を葺くためには専門知識と技能を身につけた職人でなければなりません。

こうした段階を経て箕甲や隅棟など曲線の見せ場が表現できます。 どの角度から見上げてもその洗練された線と重厚な屋根瓦の美しさは格別です。

私たちは伝統美を表現し、自然と手を合わせたくなるような屋根瓦を葺いていきます。


銅板葺-緑青が醸す雄大な経年美

金属屋根材として最も古い歴史を持つ銅板は柔らかな光沢をもつ赤橙色から自然と調和しながら緑青色へと変化していきます。

その様子は人と地域とともに歩む時間の経過を感じさせ、趣ある雰囲気を醸し出します。

社寺建築の銅板葺において最も大切な事は軒付・箕甲・棟・鬼などの下地の曲線を損なわないようにしつつ、建物そのものが持つ佇まいを保ち曲線美を表現することです。

下から見上げた際の箕甲の美しさや鬼板の叩き出しのラインは特に丁寧な仕上がりを意識しています。職人の卓越した技により細部まで美しさを追求して完成した屋根は見事な曲線を描きます。

社寺板金の仕事は日本の伝統技術です。宮大工が作った下地に合った衣装を纏わせ、時間が経ってもその経年美を残す希少な技術であることに誇りを持っています。

飾 ‒‒‒‒‒ 神具仏具・彫刻・畳・絵師

神具・仏具-心の安らぎを守り繋ぐ

日本の神具・仏具は信仰の表現手段やお供えとしての役割はもちろん、世界に類を見ないほど独自の文化として発展を遂げています。

その伝統的価値と技術は国内外から高く評価されています。

伝統美術の文化は日本全国に広がっており、地方にひっそりと祀られている地域の守り神ひとつをとっても素晴らしい物が多く存在しています。

人々の幸せと心の安らぎを願い受け継がれてきた仏像・仏具・神具等は文化的価値に優れており、豊かな感性と技術が随所に見受けられます。

この貴重な財産を維持していくために補修や修繕は欠かせません。

修繕にあたり元々の風格や質感を損なうことがないよう細心の注意をはらい、専門的な知識と卓越した技術を駆使して古から未来へとその時を繋いでいきます。

修繕以外にも神具や仏具を新調する際には施主様のご要望と建物全体のバランスや雰囲気を大切にしながら喜んでいただけるよう心がけています。

彫刻-精緻を極め華麗に彩る

社寺建築の魅力の一つである彫刻は虹梁や木鼻、屋根の上の鬼板、屋根の妻に付く懸魚など建物の随所に華を添えます。

社寺彫刻は龍や獅子をはじめとした聖獣や波頭、雲紋など立体感に溢れるものが多く、下から見上げた時に最大限美しく見えるよう構図を練ります。

取り付けられる建物の歴史や雰囲気に合わせた図柄を描き刻線の太さなど細部まで創意工夫を図り彫り込んでいきます。

豊かな感性と精巧さを携えた職人の手により、 華麗で精緻を極めた細工が完成します。

ひとつひとつ想いを込めて彫り進めた作品は空間を華やかに彩り見る人を魅了し続けます。

修復の場合は元あった姿に復元します。 その彫刻がどのような技で彫られていたかを見極めるには確かな目と熟練の手技が求められます。

技術の結晶を後世に繋ぎ伝えることは重要で価値のある仕事です。

畳-緻密な世界が織りなす直線美

神社仏閣で使用される畳の多くは上質な素材が使用され、一枚の畳が仕上がるまでの製造工程には積年の知恵と労力を費やします。

特に寺院では畳縁に紋が入った縁(紋縁)を使用するため、畳を入れた際に隣り合う紋が平行に並び、縦と横で重なる部分では四つの紋が綺麗に並ぶよう、部屋や紋の寸法・紋数などを緻密に計算して縫い付けます。

この紋縁は他の縁と異なり、加工自体も大変難しく、紋の円が一つ一つ綺麗に表へ出るよう仕上げるには熟練の技術が要求されます。

そして紋縁が揃うことで直線美が織りなす特別な空間が広がります。

私たちの仕事が 心穏やかに手を合わせる空間を作るための 一助になれば幸いです。

誇りを持って作り上げた直線美を施主様にご満足いただけることが至上の喜びです。

絵師-鋭敏な感性で悠久なる美を描く

絵師は伝統建築に彩りを加える職人です。例えば天井や襖に絵を描いたり、漆喰で壁に立体的な絵を描く鏝絵などが挙げられます。

日本人特有の鋭敏な感性で四季の花や鳥などの絵柄を建物に取り込むことで、屋内であっても身近に自然を感じられる空間を作り上げます。

自然以外にも龍の図柄に火除けの意味が込められているように、古から絵柄や形はそれぞれ意味と願いを持っています。

そういった絵柄の意味合いと描く場所の構造を理解し、想いを融合させることで一層魅力的な空間へと価値を引き上げます。

そのためには常に技術・感性を磨き、施主様のご要望を大切にしながら心を込めて描きます。

イメージ通りに表現できた時や出来上がりに対して想像以上にご満足していただけた際に大きな喜びとやりがいを感じます。